債務整理でコスパがいいのはどれ?  自己破産よりも任意整理が選ばれる理由

任意整理、自己破産、個人再生、どれがコスパの良い債務整理なのか悩む人は多いです。

任意整理はメリットとデメリットのバランスが良く、選ばれる確率の高い解決方法です。

しかし自己破産や個人再生がコスパ的により優るケースもあります。

この記事を読めば、どの債務整理を選ぶべきかの方向性が見えてきますので、是非とも参考にしてみてください。

みんな迷う!債務整理はどれがおすすめ?

債務整理は法律の力を借りた借金の解決方法です。

しかし債務整理には種類があり、任意整理、自己破産、個人再生の3つで構成されます。

  • 任意整理
  • 自己破産
  • 個人再生

それぞれ異なる特徴があり、ベストな選択をするためには手続きごとのメリットとデメリットを知っておく必要があります。

債務整理の選択に迷う人は多いです

しかし手続きごとのメリットとデメリットを整理すれば、どの債務整理が向いているかの方向性はつかめます。

なお、選ばれる数が多いのは圧倒的に任意整理です。

債務整理で任意整理が選ばれる理由は?

債務整理で最も選ばれる確率が高いのは任意整理です。

債務整理の現場で働いていた時の経験では、相談者の80%以上が任意整理を選ぶ印象があります。

相談者の80%以上が任意整理を選ぶイメージ

任意整理が選ばれる理由は、債務整理のなかでデメリットの数が一番少なく、リスクが軽いからです。

借金の減額効果に注目すると、自己破産は任意整理よりも優れています。自己破産をすると借金がゼロになるからです。

しかし債務整理の現場では、自己破産を選ぶ人は少ない印象があります。

任意整理では気にする必要のないリスクが、自己破産には存在するからです。

自己破産のデメリットは多岐にわたります。

しかし私の経験上、相談者が自己破産を断念する理由のほとんどは以下の3つに集中します。

  • 持ち家を失う
  • 車を失う
  • 同居の家族に打ち明ける必要がある

自己破産のデメリットは他にもあります。

しかし相談者が気にするのは、持ち家を残せるか、車を残せるか、家族に秘密にできるかの3つです。その他の点を気にする人は多くないです。

「家・車・秘密」がポイント

家も車もいらないし、家族にも打ち明けるのもいとわない人は自己破産を受け入れやすい傾向にあります。とはいえ、そのような人は少数です。

自己破産のリスクを考慮した結果、相談に訪れた人のほとんどが任意整理を選びます。

任意整理だと持ち家も車も確実に残せます。同居の家族に借金の事実を打ち明ける必要もありません。

デメリットが少なく心理的ハードルが低い点が、任意整理が選ばれる理由です。

なお、自宅を残せる点以外では、自己破産と似たデメリットが個人再生にあります。個人再生を選んでも車を失うリスクはありますし、家族に打ち明ける必要もあります。

任意整理とは?

任意整理は交渉による借金の整理です。

借金の負担を軽くするために、貸金業者やクレジットカード会社と交渉することを任意整理と言います。

交渉が成功すると利息がゼロになったり、毎月の返済額が下がったりします。

個人での任意整理は難しく、弁護士や司法書士に依頼するのが一般的です。

意外と知らない人が多い?債務整理と任意整理の違い

債務整理と任意整理は違う意味です。

言葉が似ているため同じ意味だと思い込んでいる人もいます。しかし任意整理と債務整理は違います。

債務整理と任意整理は「治療」と「服薬」の関係と同じです。

債務整理=治療

だとすると

任意整理 服薬
個人再生 入院
自己破産 手術

のイメージです。

債務整理という大きなくくりの中に任意整理があります。

服薬が軽い治療で手術が重い治療であるのと同じで

破産  >  個人再生  >  任意整理

の順に程度が重くなります。

自己破産が重い治療なのは、なんとなくイメージできますよね。

任意整理と「自己破産・個人再生」はどう違う?

債務整理と「自己破産・個人再生」は下記の点で異なります。

  • 借金の減額効果
  • 手続きにかかる手間
  • リスク

借金減額効果の点で、任意整理は自己破産や個人再生よりも劣ります。

しかし任意整理の手続きはシンプルで、提出書類はほとんどなく、手続き完了までの時間も短めです。

自己破産・個人再生の借金減額効果は高いです。

そのぶん手続きには手間もかかりますし、時間もかかります。

任意整理には無いリスクを受け入れる覚悟も必要です。

自己破産や個人再生は裁判所の手を借りる手続きです。

手続きは厳格で、破産法や民事再生法に沿って進める必要があります。

しかし任意整理には「任意整理法」といった法律は存在しません。

細かいルールはなく、話し合いで当事者が納得すればいいのです。

なお、自己破産と個人再生は法的整理と呼ばれ、任意整理と明確に区別されます。手続きの性質や流れが大きく異なるからです。

私的整理 任意整理

裁判所はか介入しない。
手続きはシンプル。
効果は法的整理に劣る。

法的整理 自己破産・個人再生

裁判所が介入する。
手続きは複雑かつ厳格で時間がかかる。
そのぶん効果は高い。

私の勤務していた事務所でも、任意整理と法的整理では事件ファイルの保管場所が区分けされていました。

任意整理のメリット

任意整理のコスパを考えるにあたり、任意整理のメリットをまず確認しましょう。

  • 借金の負担が軽くなる
  • 不安が軽くなり心に余裕が持てる
  • 貯金をする力が身につく
  • メリットの割にリスクが少ない

借金の負担が軽くなる以外にも、心理的にプラスの効果が生まれたり、貯金をする力が身についたりと、複数のメリットが期待できます。

家や車を失わずに済んだり、同居家族に秘密にできたり、リスクが少ないのも任意整理が選ばれる理由です。

借金の負担が軽くなる

任意整理をすると、以下の借金の減額効果が期待できます。

  • 利息がゼロになる
  • 毎月の返済額が下がる
  • 支払いがストップする
利息がゼロになる

任意整理では利息がゼロを求めて交渉します。

利息のカットは任意整理の中心に位置付けられるメリットです。

利息が無くなり元金のみになれば、トータルで支払う借金の総額が減ります。完済までのスピードも格段に上がります。

借金が進まず疲弊している人にとって利息ゼロの効果は大きいです。

毎月の返済額が下がる

任意整理手続きでは、長期分割返済の交渉もします。

利息ゼロと同じくらい、長期分割返済の効果は高いです。毎月の返済額が高くて支払いができなくなっている人も多いからです。

交渉で毎月の返済額が下がれば、収入の範囲内で家計のやりくりができるようになります。借金返済のためにお金を借りるという悪循環から抜け出せるのです。

利息がゼロになっても、借金を返済ができなければ意味はありません。収入の範囲内でやりくりできるようになってこそ、完済まで到達できます。

支払いがストップする

任意整理の手続き中は支払いがストップします。手続き中は相手業者に借金を返済する必要はないです。

支払いのストップが原因で相手から催促や嫌がらせの電話がかかる心配もいりません。

支払いのストップは主に精神面においてメリットをもたらします。

催促の電話が止まると、精神的な余裕を取り戻せるからです。

支払いが止まって精神的に落ち着けた

冷静に考えられるようになり、借金地獄から立ち直るきっかけになった

このように過去をふりかえる経験者は多いです。

余裕?自信?任意整理がもたらす心理的効果

任意整理は心理的にもプラスの影響を及ぼします。

任意整理をすると支払いが止まりますので、業者からの催促に悩まされる機会がなくなります。心に余裕が生まれるのです。

収入の範囲内でやりくりできている、借金が着実に減っている事実は人間に自信を与えてくれます。

前向きな気持ちになれるのも、任意整理のメリットの一つです。

貯金をする力が身につく

任意整理をすると貯金をする能力が身につきます。

返済を繰り返すことで貯金体質を獲得できるからです。

任意整理は元本の返済が必要です。元本も含めて借金が100%免除される自己破産とは違います。

任意整理後はブラックリストの影響(後述)でお金を借りられなくなります。借金やクレジットカードに頼らない生活を維持しないといけません。

しかし収入の範囲内で返済を繰り返す行為は貯金と同じです。

借金の完済後も同じ生活を継続すれば、意識せずとも貯金が積み上がっていきます。

私の経験では、2回目の自己破産をする人より2回目の任意整理をする人のほうが少ないです。

おそらく借金やクレジットカードに依存しない返済生活を通して、お金を管理する能力がUPしたからではないでしょうか。

任意整理をすると、返済を通して自然と貯金をする習慣が身につくのです。

任意整理は自由度が高くリスクが少ない

債務整理の手続きのなかで、任意整理はリスクが少なくて自由度の高い債務整理です。

任意整理は以下の点で、自己破産や個人再生よりも自由度が高いと言えます。

  • 家や車を残せる
  • 家族や勤務先に秘密にできる
  • 保証人に迷惑がかからない
  • 書類の準備が必要用ない
  • 借り入れ理由を問われない
  • 職業制限がない
家を車を残せる

家や車を残したままでも任意整理はできます。

任意整理では債務整理をする借金を選べるからです。

住宅ローンや車のローンを債務整理をすれば、家や車は強制競売にかけられたり、没収されたりします。

実務では、強制競売や引き揚げに関する条項が契約書に記載してあることがほとんどです。

しかし任意整理は手続きする借金を選べます。

住宅ローンや車のローンを除いて任意整理をすれば、家や車は残ります。

債務整理の手続きに含めない以上、住宅ローンや車のローンは無関係だからです。

持ち家
任意整理 残せる 残せる
自己破産 失う 失う可能性あり
個人再生 残せる 失う可能性あり

住宅や車のローンは以前と変わらず支払っていけば問題ありません。任意整理が理由で一括請求されることもないです。

一方で自己破産あるいは個人再生では、家や車を失う可能性があります。

任意整理と違って、債務整理をする借金を選べないからです。

自己破産や個人再生では、法律のルールにより、すべての借金を手続きに含める必要があります。

家を残したいから、車を残したいからという理由で、住宅や車のローンを手続きから外せません。

家や車を残せるのは任意整理の強みです。

家族や勤務先に秘密にできる

家族や勤務先に内緒のままで、任意整理は完了できます。

金融機関を除いて、任意整理の事実は第三者に共有されないからです。

任意整理をした事実は、金融機関が閲覧できる共有情報(=信用情報)に記載されます。

しかし共有情報は、銀行やクレジットカード会社などの金融機関のみが閲覧可能です。金融機関以外の第三者は家族であっても閲覧できません。

任意整理では、自破産や個人再生と違って官報公告がされないため、ネットで情報を検索される恐れもないです。

任意整理の事実は第三者に漏れない仕組みになっているのです。

任意整理の事実は第三者に漏れない

また任意整理は家族の協力がなくても手続きを進められます。本人が揃えなければならない書類がほとんどないからです。

自己破産や個人再生の完了には、たくさんの書類が必要です。

同居家族の給与明細、勤務先が発行する退職金見込み額証書など、本人の力だけでは準備できない書類も含まれます。

必要書類の準備には第三者の協力が求められますので、一人で手続きを完結させるのは難しいです。

債務整理の事実を打ち明けない限り、手続きが進まない可能性があります。

同居家族に債務整理の事実を打ち明けられず、必要書類が揃わないまま債務整理が失敗に終わるケースは多いです。

任意整理ではそのような心配はいりません。第三者の協力なしに手続きは進みます。

家族や勤務先に秘密のまま債務整理をしたい人にとって、任意整理はベストな選択です。

保証人に迷惑がかからない

任意整理は保証人に迷惑をかけず債務整理ができます。

任意整理は手続きする借金を自由に選べるからです。

保証人付きの借金を債務整理に含めてしまうと、保証人が借金の催促を受けます。

債務整理の事実を、前もって保証人に打ち明けないといけません。

請求がきっかけで保証人との人間関係が悪くなってしまう恐れもありますが、仕方ないです。

しかし任意整理は手続きする借金を任意に選べます。

保証人への請求を避けたいのであれば、保証人付きの借金を手続きから外せばよいのです。

自己破産や個人再生は債務整理をする借金を選べず、借金はすべて手続きに含める必要があります。保証人への請求は免れません。

保証人に迷惑をかけずに債務整理をしたいのなら、任意整理をするしかありません。

書類の準備が不要

任意整理は、印鑑と本人確認書類(免許証や健康保険証等)さえあれば完了してしまいます。とても楽なのです。

カードや明細があれば準備したほうが望ましいですが、なくても手続きは進みます。

任意整理は必要な書類がほとんどありません

交渉には借り入れ残額の記録された取引履歴が必要です。

しかし取引履歴は、弁護士や司法書士が本人の代わりに相手業者から取り寄せてくれます。本人が動く必要はないのです。

任意整理で必要な書類はゼロに近い

自己破産や個人再生では、本人が自力で集めなければならない書類がたくさんあります。

任意整理のように、代理人にすべてお任せというわけにはいきません。

必要な書類を集められずに弁護士や司法書士から手を切られてしまうケースもあります。

任意整理では書類が揃わずに失敗するなんて例はありません。

労力をかけずに債務整理をできるのは、任意整理の便利な部分です。自己破産や個人再生に比べると、完了までの時間も短いです。

借り入れ理由を問われない

任意整理は借り入れ理由に関係なく手続きできます。

自己破産や個人再生と違って、任意整理には法律の細かい縛りがないからです。

自己破産だとギャンブルや投資で作った借金は免責不許可事由(自己破産できない理由)に該当します。借り入れ理由に問題があると、裁判所に自己破産を認めてもらえないリスクがあります。

しかし任意整理には自己破産のようなルールはないです。

ギャンブルや投資、ブランド品の購入など、浪費による借り入れであっても手続きはできます。

私の記憶では、借り入れ理由が原因で任意整理が失敗に終わった例はないです。

消費者金融やカード会社は、債務整理をしようとする人の借り入れ理由を気にしていない印象があります。

お金を借りた理由を気にせず手続きできるのも、任意整理のメリットです。

職業制限がない

任意整理には職業制限がありません。

手続きの一定期間中、警備や保険営業など特定の職務に就けないルールが自己破産にはあります。

任意整理では、手続きが職業に影響を及ぼすことはないです。

H2)自己破産とは?

自己破産は借金をゼロにする手続きです。

任意整理は利息のみ免除されるのに対して、自己破産は元本も含めて借金がまるまる無くなります。

文字通り借金がゼロになるのです。

効果が大きいぶん、裁判所に必要書類を提出して「支払い不能」である事実を証明する必要があります。

自己破産のメリット

借金ゼロが自己破産のメリットです。

利息も元本も免除されますので、利息のみ免除される任意整理よりも減額効果は高いです。

自己破産の借金減額効果はナンバーワン

自己破産後は返済がいっさいなくなります。

稼いだお金は、生活費を除いてすべて生活費にまわせるのです。

メリットのみに焦点を当てる限り、自己破産は任意整理よりもコスパに優れていると言えます。

自己破産のデメリット

借金がゼロになるのと引き換えに、自己破産では以下の点をデメリットとして受け入れる必要があります。

  • 家を手放す必要がある
  • 車を手放す可能性が高い
  • 同居者の家族に秘密にできない
  • 保証人に迷惑がかかる
  • 裁判所に提出する書類を集める必要がある
  • 借り入れ理由が問われる
  • 一部の職業に制限がかかる

これらのデメリットのすべては、任意整理では問題になりません

自己破産を選ぶと、任意整理にはないデメリットが生じるのです。

個人再生とは?

個人再生は借金の元本を5分の1にまで減らす手続きです。

利息もゼロになります。

借金の減額効果は任意整理より高いです。

下記の通り、個人再生のデメリットは自己破産と共通するものが多いです。

  • ローンの残っている車は手放す必要がある
  • 同居者の家族に秘密にできない
  • 保証人に迷惑がかかる
  • 裁判所に提出する書類を集める必要がある

個人再生と自己破産との明らかな違いは家を残せるかどうかです。自己破産と違って住宅ローン支払い中の家でも残せるのです。

個人再生は住宅を残せるのが強み

しかしローンの残っている車は手放すことになります。

同居家族には内緒で手続きできませんので、借金の事実を打ち明ける必要があります。

要するに債務整理で一番コスパがいいのは?

コスパの一番よい債務整理は、あなたがどれだけリスクを受け入れられるかによって変わります。

いかなるデメリットも気にしないのであれば、自己破産が最もコスパが良いと言えるでしょう。同じ費用を払うのであれば、借金がゼロになるほうがお得だからです。

以下の3つに当てはまる人は、自己破産を検討する価値ありです。

  • 持ち家を失ってもいい(or 持ち家が無い)
  • 自家用車を失ってもいい(or 車を持っていない)
  • 同居の家族に借金の事実がバレてもいい(or 一人暮らし)

持ち家は絶対に手放したくないけれども、その他は気にしない人であれば個人再生がコスパ的に良いです。個人再生は住宅ローン支払い中の家を残せるからです。

以下の2つに当てはまる人は、個人再生がベストな選択になる可能性があります。

  • 自家用車を失ってもいい(or 車を持っていない)
  • 同居の家族に借金の事実がバレてもいい(or 一人暮らし)

持ち家も車も残したいし、同居の家族に内緒のまま債務整理をしたい人であれば、任意整理がコスパ的におすすめです。

結局のところ、どの程度のデメリットを許容するかでベストな解決方法は変わります。

リスクを気にしないのであれば自己破産がコスパの良い債務整理です。

対してリスクを最小限に抑えたいのであれば、任意整理がコスパの良い債務整理になります。

まとめ

コスパの良い債務整理はリスクをどのくらい受け入れられるかで変わります。

リスクを考えるときは、以下の項目に注目しましょう。

  • 家は残したいか?
  • 車は残したいか?
  • 同居の家族に秘密にしたいか?

どの項目も気にならない人は、自己破産がコスパ的に良い可能性があります。

対して、家も残したい、車も残したい、同居の家族にも秘密にしたいという人は、任意整理がコスパ的に良いです。